法話図書館 【名取芳彦のちょっといい話】ブログ

平成14年から連載された名取芳彦(なとり・ほうげん)先生のちょっといい話 ブログ版です。携帯電話からも見られます。
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第93話 無視できない虫
  調べ物のために数年間開いていなかった本をあけたりすると、体長一ミリにもみたないベージュ色の虫の姿が歩いていることがある。
塔婆の上でも見かけたことがあるから、きっと木の繊維を食べる虫なんだと思う(名前をご存じの方は教えて!)。
頭も足も判別できないくらいチッポケな虫だが、私にはどうしてもつぶすことができない。結局はフッと吹き飛ばすか、それ以上読む必要がない場合は、そっと本を閉じることにしている。
こうなったのは、十年ほど前に読んだある文章がきっかけだ。

 夏目漱石の弟子で、昭和になってからユーモラスな作風で才能を開花させた内田百 けん 門構えに月。東京大空襲で焼け出された彼が、鴨長明にならって自分の暮らしを率直に描いた作品に『新方丈記』(福武文庫 う0115)がある。
焼け出されて立てた小屋は三畳の広さ。まさに一畳四方の方丈の暮らし。
この本の中で、彼の小屋にやってくる虫について書いた一節が、私に影響を与えた。

――虫には大きいもの小さいものもある事は承知しているが、鰐や錦蛇をこの小屋に入れて想像する事は適当でない。小さいのは又ケシ粒をいくつにも割った位 のもいる。あまり小さいのでどんな恰好をしているのかよく解らないが、動き出すところをみると、自分が行こうと思う方向もあるらしい。よく見れば頭もあ る。従って顔もあるに違いない。机の上などを這い出すと見えない所へ行ってしまう迄目を離すことが出来ない。そう云う小さな生命には却って威厳の様なもの があって、指先で潰したり、なしくったり(こすりつけるの意。名取注)する気にはなれない。――

 この虫が、きっと本の中にいる虫だと思う。
百里蓮伴分が行こうと思う方向もあるらしい”と書いている。
いったいこの虫にどれくらいの脳味噌があるのかわからないが、確かに意志をもって進んでいるのだ。
 アンパンマンの作者、やなせたかしさんが、私が小学生のころ熱唱していた♪手のひらを太陽に♪の作者でもあることを知ったのは、ちょうどこの本を読んだ直後だった。
 そうだ!そうだ!そうなのだ!みみずたって、おけらだって、アメンボだって、生きているのだ。友達なのだ(なんだか天才バカボンのパパみたいな語調でおわることになった……)!

 さて、次回は虫つながりで、去る7月15日付けの業界新聞『仏教タイムス』の「子どもたちに送る千字メッセージ――いのち尊し――」に書かせてもらった話をお届けします。ありが悪者に見えたことアリませんか?
posted by houwa-natori | 17:48 | ちょっといい話 | comments(0) | -
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